冷風扇、蒸し暑いときこそ使いたいのに夏が近づくと、テレビの通販番組でもネット広告でも盛んに目にするようになる「冷風扇」ですが、実は、蒸し暑い時はまるで役に立つはずがない代物です。 根拠をもとに詳しく説明します。 【冷風扇とは】 そもそも、冷風扇とは、水で湿らせたフィルターにファンで風を当て、水が蒸発するとき気化熱を奪う性質を利用して温度を下げる装置です。 1gの水が蒸発するには約500calの熱を奪う必要があるため、その分、温度が下がります。 しかし、問題なのは、蒸し暑い時に蒸発するのか?という点です。 【人の冷却システム】 そもそも、人は生まれながらに冷却システムを身に纏っているってご存知ですか? 水の蒸発を利用して体温を下げるシステム・・・汗腺です。 動物みんなが持っている訳ではなくて、ワンちゃんは汗をかくことができません。暑いときは、舌を出して、呼吸で口を冷やすしかないようです。 その点、人は汗をかくことで体を冷やすことができるので、カラッと乾燥しているときは、たとえ気温が30℃あっても、風が気持ちよく感じるものです。 もちろん、こんな時は、冷房は要りませんね。 【湿度が高いと冷やせなくなる】 ところが、蒸し暑くなると、そうは行きません。 たとえ気温が26℃程度だったとしても、湿度が高いと、熱中症で倒れる人も出てきます。 汗が蒸発しにくくなり、気化熱を奪えなくなるからです。 蒸し暑いときこそ、冷房が必要です。ところが、冷風扇では水が蒸発できないので原理的に温度を下げることができません。 【蒸し暑いと冷えない証拠は湿球計】 最近は、デジタル温湿計も珍しくなくなりましたが、ずっと以前、世の中がアナログだった頃は、乾湿計という温度計で湿度を測定していました。 乾湿計には、2本の温度計(ガラス管タイプ)が並んでいて、1つの温度計は、湿ったガーゼで球体部分が覆われている構造です(これを湿球といいます)。もう一つの温度計はそのままです。(これを乾球といいます)。 カラッとして、涼しいな〜と私たちが感じるときは、発汗により気化熱がどんどん奪われているとき。 湿球計もガーゼの水がどんどん蒸発するので、冷やされていきます。 すると、乾球計と比べて5℃も6℃も低くなります。その低下から逆に「現在の湿度は○○%である」と判断するしくみになっています。 もし、湿度20%のようなカラカラの場所があるとしたら、10℃以上低くなるでしょう。 冷風扇の広告で「マイナス12℃」などと言うのは、超カラカラの場所での話しです。 このような場所では、私たちの体に備わっている発汗システムでも気化熱がどんどん奪われますので、すごく涼しく感じるでしょう。 もちろん冷房不要です。 ところが、風呂場のように湿度が高い場所に湿球計を持って行くとどうでしょう。 ガーゼの水が蒸発できないため、湿球計の温度が下がらなくなります。「温度差が0⇒湿度100%である」と判断するのが乾湿計です。 このような場所では、私たちの発汗システムは汗を出して冷やそうとしますが、蒸発せずに熱がこもるため、さらにがんばって汗を出し、それでも、蒸発せずに熱がこもり、汗べたべたになります。 こんなときこそ、冷房が必要なのですが・・・もうお分かりの通り、冷風扇ではフィルターの水が蒸発しませんから温度を下げることができません。 冬場、暖房でカラカラに乾燥する時に、加湿機として利用する方がいいかもしれません。 (もちろん、部屋の気温が気化熱により下がりますので、暖房費が増えます) |